2015年12月に山口県防府市の防府市立防府図書館で発見された陳澄波(チェン・チェンボー)作「東台湾臨海道路」のレプリカが完成し防府図書館で一般公開中です。
この作品は、山口県防府市江泊村出身の第11代台湾総督、上山満之進が、1928年に台湾総督を辞任する際に、制作を陳澄波に依頼したもの。作品は縦69cm、横129cmの油彩で、1932年に開通した台湾東部、花蓮「蘇花公路」が描かれている。また、絵の中には「タイヤル族」らしき親子が手をつないで歩いている姿が描かれ、木製の額縁にも台湾南部の蘭嶼島の「タオ族」の意匠が彫り込まれている。台湾総督在職中、上山満之進は台北帝国大学を設立しており、原住民族文化研究にも力を入れていたことがうかがえる。
上山満之進は、晩年、地元防府市の文化振興のため東京の私邸を処分し防府図書館の前身「三哲文庫」の建設を計画。物価の高騰等により、建設が中断し、満之進の死後、遺族が意志を引継ぎ1941年に開館した。その際、この絵も寄贈されたと思われる。
2015年、「東台湾臨海道路」の発見後、オリジナルの絵は、福岡市の福岡アジア美術館で寄託修復され、現在は山口県立美術館に保管されている。展示による劣化を防ぐため、防府市はレプリカを制作し防府図書館で一般公開している。
陳澄波
台湾嘉義市出身。洋画家(1895年~1947年)。1924年、東京美術学校入学。1926年、台湾出身の洋画家で初めて帝展に入選。日本統治終了後、二二八事件に巻き込まれ、1947年に生涯を閉じる。「悲劇の画家」とも言われる。
三哲
三哲とは、上山満之進が尊敬した「吉田松陰」「品川弥二郎」「乃木希典」のことで、上山満之進の文に「三先生は逆境の人であった。人間の真価は逆境に於(おい)て発揮せられる」とある。満之進は、図書館建設にあたって、名称を「三哲文庫」とすることを希望しており、満之進の信念を名称に託したかったと思われる。
防府市立防府図書館
山口県防府市栄町一丁目5番1号
月・水~金 :午前9時30分~午後7時
土・日・祝日:午前9時30分~午後6時
休館日 :火曜日
入場無料
引用記事:
ほうふ日報 第12296号
令和2年6月19日発行
防府日報株式会社
山口県防府市本橋7の26
参考:
上山満之進の思想と行動
児玉識 海鳥社
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